コスタリカ　マレスピ　ラ・シエラ農園　カツーラ、カツアイ（アナエロビコ）

＜２０２１年のアナエロビコ精製の話＞

コロナ禍になって以降、中米出張ができなくなっているのですが、２０２１年も何とか独自の買付をできないかと思い、コスタリカのエクスポーターとやり取りをして、いくつかのコーヒーを買付することができました。
結果的に４ロット買付をして、これまで「アグリビド」「ティエラ・メディア」と販売して、これが３つめです。

精製方法が「アナエロビコ」ということで、今現在としては少々微妙な立ち位置の精製方法になります。

２０２１年前半頃は、アナエロビコをはじめとしたいろいろな精製方法が出てきて、それぞれにシナモンやローズなどといった、コーヒーのイメージから離れたフレーバーを持つものが人気になっていました。
当店でも1ロット、シナモンフレーバーのあるコーヒーを販売していて、とても好評でした。

それもあって、昨年春にこのコーヒーを買付する際にコスタリカのエクスポーターにリクエストしたのが、

「シナモンフレーバーのあるコーヒー」だったのです。

ただ、その後の２０２１年夏頃に、このアナエロビコ精製に詳しい人物から、「こういったフレーバーのコーヒーは、精製段階でその香りの元になるものを一緒に加えている」という内容の論文が出ました。

それまで、アナエロビコ精製という新しい精製方法で作ったから、そういうフレーバーが出ていたと考えられていたのに、どうやら意図的に加えることで強いフレーバーが出ていたということだったのです。

当店ではそれよりも前に、生産者とのやり取りの中で「シナモンを加えて精製している」という情報を得ていたので、特に驚きはしませんでしたが、スペシャルティコーヒー界ではなかなかの衝撃でした。

＜これも何かの縁ということで。＞

そういう経緯で発注しまして、まさかこういう展開になるとは思っていなかったのですが、そこから 発注を取り消すこともできないのと、そもそも加えているのを承知で発注していたので、「まあ、いいか」と思いながらコーヒー豆の到着を待っていました。

そして２０２１年１２月にようやくお店に到着。テスト焙煎をしようとバキュームの袋を開けてみると。

「あれ？シナモンの香り、しないなあ。」

昨年のシナモンフレーバーの香りがあったコーヒーは、焙煎前の生豆の段階ですごく甘い香りがしました。
でも、このコーヒーはそういった香りは全くせず、いつもの生豆の臭いでした。

まあ、焙煎してから出るパターンもあるのかもと思いながらテスト焙煎をいつものように焙煎度合違いでいくつか焙煎。何日か掛けて試飲をしてみたところ、完全に悟りました。

「うん、これはシナモン入ってない！」

世の中がこういう展開になることを分かっていたのか、単純に納品されたコーヒーが間違っていたのかは正直なところ定かではないですが、一つだけ間違いないのは、シナモンフレーバーのないコーヒーが 到着したということです。（まあ、十中八九納品ミスでしょう。）

ですが、今のタイミングでこういったコーヒーがお店に届いたのも何かの縁かなと開き直るのがカフェカホン流。
コーヒーに罪はないですから、改めてこのコーヒーをしっかり見極めて、焙煎することにしました。

＜アナエロビコ精製は、これくらいが良い＞

改めてこのコーヒーを素直に向き合ってみると、とても良くできたコスタリカコーヒーであることが分かります。

とにかく、良いバランス。
酸は明るい印象のものがありますが、香ばしさを感じるコクや香りがあるので、これは日本人好みですね。
飲みやすくてゴクゴク飲めるコーヒーです。

「納品違いだったら、そもそもアナエロビコでもないんじゃないの？」と思われるかもしれませんが、そこはしっかりアナエロビコ精製だと思います。
というのは、後味にチーズを食べた後のような感覚があり、こういった発酵食品系のフレーバーや感覚が出るのは、アナエロビコ精製の本来の特徴です。

ただのウォッシュドであれば、余韻まで真っすぐクリーンな印象ですが、このコーヒーの後味は少しチーズ感があって、ユニークです。
でも全体のバランスや飲みやすさは邪魔しないので、アクセント程度で好印象です。

昨年いろいろ言われたアナエロビコ精製ですが、こういった使われ方だと面白いのではないかと思いますね。

焙煎度合は、シティロースト。
このコーヒーの味作りとしては、基本はとにかく飲みやすいバランスを作ること。
そうすれば自ずとチーズの感覚も付いてくるので、結果的にまとまりの良いコーヒーになっています。

精製方法はアナエロビコですが、基本の風味はウォッシュドです。
場面を選ばず、いつでも飲めるオールマイティコーヒーですよ。

【豆についての情報】

生産国：コスタリカ
地域：ブルンカ
品種：カツーラ、カツアイ
精製：アナエロビコ